監修:鈴木嘉洋 医師
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鈴木 嘉洋 医師 - サーチュインクリニック大阪院 院長
鈴木 嘉洋 医師 - サーチュインクリニック大阪院 院長
この記事の監修医師

鈴木 嘉洋(すずき よしひろ)

サーチュインクリニック大阪院 院長
医学博士 / 呼吸器内科専門医・指導医 / 総合内科専門医

愛知県刈谷市出身。臨床研修医を経て、呼吸器内科医として総合病院に勤務。途中、名古屋大学大学院にて研究にも携わり、博士号取得。肺がん、肺炎、喘息、COPD、新型コロナウイルス対策など多岐にわたる呼吸器疾患の診療にあたり、その中で肺癌症例や、高齢者について数百人の看取りを経験。「健康な人が病気にならないためのアプローチをすることが、医療の本来の役割である」という信念のもと、2022年に総合病院を退職。2023年春、サーチュインクリニックの院長に着任。

主な資格・経歴
• 2005年4月 医師国家試験合格(医籍登録番号446744号)
• 2017年10月 名古屋大学医学博士号を取得
• 呼吸器内科専門医・指導医
• 総合内科専門医
• 医療法人社団医献会 理事
• 総合病院での数百例の看取り経験
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人間には2つの寿命がある――生物学的寿命と健康寿命。

慢性疾患の時代を迎えた現代社会において、「健康寿命のレッドゾーン」を一度超えてしまうと、もう後戻りはできません。総合病院で呼吸器内科医として多くの患者を看取った経験から、フレイル、サルコペニア、誤嚥性肺炎の実態と、なぜ予防医療が重要なのかを解説します。

「病気でもなく、健康でもない人」にどう対応すべきか?

かつて、日本人の死因の多くを占めていた細菌やウイルス感染などは、日本社会の発展に伴い、大きく減少しました。

それと入れ替わるようにして増えてきたのが、慢性疾患です。糖尿病や高血圧、がんなども慢性疾患の一種とされています。

慢性疾患は、症状が非常にゆっくり進むため、病気と認定された頃には、病状がかなり進行していることもしばしばです。

病院は、基本的に病名を付けられないと治療ができません。ですから「病気ではないけれども、健康体でもない、過渡期の人に、どう対処すべきか?」が今、医療関係者の課題になっているのです。

フレイル・サルコペニアとは何か?

フレイル(Frailty)
人が、加齢に伴って体力やストレス耐性などが低下し、要介護手前の状態になることをフレイルと言います。
フレイルには、身体的フレイルや精神的フレイルなどが考えられますが、特に、筋肉量や筋力が低下している状態のことをサルコペニアとも言います。
サルコペニア(Sarcopenia)
加齢や疾患により筋肉量や筋力が著しく低下した状態のこと。嚥下機能(飲み込む力)の低下や転倒リスクの増加につながり、誤嚥性肺炎などの原因となります。
誤嚥性肺炎(Aspiration Pneumonia)
筋力の衰えからご飯がうまく喉を通らず、誤って肺に入ってしまい、肺炎になる状態。高齢者に多く見られる深刻な疾患です。
胃瘻(いろう / PEG)
嚥下機能が著しく低下した患者に対し、腹部から胃に穴を開けて栄養を直接流し込む医療措置。誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者などに行われることがあります。

呼吸器内科医として目の当たりにした現実

かつて、私が総合病院の呼吸器内科の医師をしていた時のこと。私のところには、筋力の衰えからご飯がうまく喉を通らず誤って肺に入ってしまい、肺炎になったお年寄り(誤嚥性肺炎)が度々運ばれてきました。

フレイルにより衰えた喉の機能は回復が難しい 患者を老人ホームに返すために、時には、胃に穴を開けて栄養を直接流し込む、胃瘻(いろう)という措置を行うこともありました。

このフレイルも病気と言うべきなのか、自然現象と言うべきなのか線引きが難しいもののひとつです。

"レッドゾーン"に足を踏み入れたら、後戻りはできない

慢性疾患に罹患した人は、じわじわと健康を蝕まれていき、気づいた時には、気力・体力の双方を失っています

ただ、現代社会では、たとえ健康を失っても、人工呼吸器に繋いだり、生命維持管理装置を使用したり、先に述べたような胃瘻を増設することで、延命させることが可能です。

「健康にも寿命がある=健康寿命」という考え方

このように人工的に人間の寿命が延びるに従って、不健康な状態で命が尽きるまでの数年を生きる人が多くなっていることから、「健康にも寿命がある=健康寿命」という考え方が生まれたのです。

死に至る4つのパターン

死に至る4つのパターン 1. 突然死パターン(心筋梗塞、脳卒中など) 2. がん終末期パターン(ある時点まで健康、終末期に急速悪化) 3. 臓器不全パターン(心不全・腎不全などの増悪と軽快を繰り返す) 4. フレイル・認知症パターン(長期間かけて緩やかに機能低下)

※医学界新聞:2017年2月6日「『終末期』と見なす適切な時期とは?(関口健二)」をもとに作成

こちらは、死に至る4つのパターンを図にしたものです。赤い点線より上が、健康寿命だとお考えください。向かって右の3つのパターンが、慢性疾患の患者がたどる体調の変化です。

もし、健康寿命のレッドゾーンを超えてしまったら…

(赤い点線より下へ)、もう戻ってくることはできません
病院に行っても、薬を飲んでも、健康な体を取り戻すことはできないのです

これは病院で勤務していた時に痛いほど実感していました

大事なのは… いかにこのレッドゾーンを超えないよう、体の機能を維持できるか?」ということです。
実際、ある程度の健康寿命を延ばすことであれば、すでに技術的には可能になっています

健康寿命にアプローチする方法は、いくつかありますが、その中の一つがアンチエイジング(抗老化医療)なのです。

まとめ:レッドゾーンを超える前に

人間には、2つの寿命があります。生物学的寿命と健康寿命です。

慢性疾患の時代において、フレイルやサルコペニアは、健康寿命のレッドゾーンへの入り口です。一度そのゾーンに足を踏み入れてしまうと、病院での治療や薬では、元の健康な状態に戻ることはできません。

だからこそ、予防医療が重要なのです

病気になってから治すのではなく、病気にならないための取り組み――それが、これからの医療に求められている役割だと、私は確信しています。

一人でも多くの方が、健康寿命のレッドゾーンを超えることなく、充実した人生を送られることを願っています。

医療法人社団 医献会
サーチュインクリニック大阪院 院長
鈴木嘉洋

参考文献

  • 厚生労働省HP
  • 一般社団法人日本老年医学会HP
  • 医学界新聞:2017年2月6日「『終末期』と見なす適切な時期とは?(関口健二)」


レッドゾーンを超える前に、できることがあります

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