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2024年09月13日
新型コロナウイルスは、世界の何を変えたのか?
【新型コロナウイルスは、世界の何を変えたのか?】
◆「ワクチンは危ない」は本当か?
新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミック(世界的流行)によって、世界中で多くの方が亡くなり、経済的にも大きなダメージを被りました。しかしその一方で、コロナが世の中の変化を促したのも事実です。
例えば今回、緊急認可されたメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンですが、仮にパンデミックがなければ、実用化されるまでに後10年はかかっただろうとも言われています。
コロナ禍では、ワクチン接種に長蛇の列ができましたが、そのような中でも「mRNAのような急ごしらえで開発されたワクチンは、危ないのではないか」という疑念の声がしばしば聞かれました。
実のところ、mRNAを使った研究はすでに30年も前から行われており、30年経って、ようやくmRNAワクチンとして結実・実用化したわけです。
mRNAワクチンが、人体に本来備わっている免疫機能を利用しているという点において、18世紀のエドワード・ジェンナーが世界で初めて行った天然痘の予防接種と基本的には同じです。
ジェンナーが予防接種の効果を世間に公表した際も、当初は効果を疑問視する声が相次ぎました。しかし、予防接種の効き目があまりに絶大だったために、やがてその声も消えていきました。
1980年、WHO(世界保健機構)は天然痘の撲滅を宣言。以来、世界に天然痘患者は現れていません。
《参考文献》
日経新聞Web版:2021年9月6日、24日、Ignazzo vol.4(2006年10月)他
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◆メリットを享受するには、デメリットも受け入れる必要がある
そもそも人間が持つ免疫機能には、大きく分けて2つあります。自然免疫と獲得免疫です。
自然免疫とは、基本的な生体防御システムのことで、体内に侵入した病原体を、マクロファージやNK細胞といった白血球が発見・排除する役割を担っています。
対する獲得免疫とは、後天的に獲得した免疫のことで、一度かかった病原体の特徴を覚えて、再度、同じ病気にかからないようにする機能のこと。自然免疫から病原体の情報を受け取ったT細胞やB細胞など(白血球の一種)が、病原体を異物と認識して攻撃します。
この獲得免疫を応用したのが予防接種です。
mRNAワクチンとは、新型コロナウイルスのタンパク質の遺伝情報をmRNAにして特殊なカプセルで包み、ワクチンにしたものです。mRNAをもとに体内でウイルスのタンパク質を合成し、そこから免疫を獲得しようというものです。
mRNAによる治療の仕組み
日経新聞Web版:2021年9月6日より借用
一部の人が、ワクチンに対して疑問の目を向けるのも理解できます。けれども、私たちの免疫システムは、様々な病気にさらされることによって強くなっていくのも確かです。
個人的には、新型コロナウイルス以降、少しずつですが、医療の民主化が始まっていると感じています。
これまで、医療の分野は神格化されていて、多くの人はそれを頭から信じ、医師のいう事にただ従っていました。しかしコロナをきっかけに、人々は医療が万能ではないということに気付き、自ら考え始めています。
つまり医療の民主化とは、人々がそれぞれ自分事として医療について考え、行動し始めているという事に他ならないのです。
ワクチンは、病気を防いでくれるかもしれない。でも、代わりに副反応というデメリットも受け入れなくてはならないかもしれない。
だから、自分の中でメリットとデメリットを計りにかけて、受けるか受けないかを自分の意志で決める。こんな小さな一歩から、医療の民主化は始まるのかもしれません。
サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋
《参考文献》
日経新聞Web版:2020年11月17日、公益社団法人日本生化学会HP、他
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