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2024年05月15日
人間には、2つの寿命がある
◆「病気でもなく、健康でもない人」にどう対応すべきか?
かつて、日本人の死因の多くを占めていた細菌やウイルス感染などは、日本社会の発展に伴い、大きく減少しました。
それと入れ替わるようにして増えてきたのが、慢性疾患です。糖尿病や高血圧、がんなども慢性疾患の一種とされています。
慢性疾患は、症状が非常にゆっくり進むため、病気と認定された頃には、病状がかなり進行していることもしばしばです。
病院は、基本的に病名を付けられないと治療ができません。ですから「病気ではないけれども、健康体でもない、過渡期の人に、どう対処すべきか?」が今、医療関係者の課題になっているのです。
人が、加齢に伴って体力やストレス耐性などが低下し、要介護手前の状態になることをフレイルと言います。
フレイルには、身体的フレイルや精神的フレイルなどが考えられますが、特に、筋肉量や筋力が低下している状態のことをサルコペニアとも言います。
かつて、私が総合病院の呼吸器内科の医師をしていた時のこと。私のところには、筋力の衰えからご飯がうまく喉を通らず、食べ物が誤って肺に入ってしまい、肺炎になったお年寄り(誤嚥性肺炎)が度々運ばれてきました。
フレイルにより衰えた喉の機能は回復が難しく、患者を老人ホームに返すために、時には、胃に穴を開けて栄養を直接流し込む胃瘻(いろう)という措置を行うこともありました。
このフレイルも病気と言うべきなのか、自然現象と言うべきなのか、線引きが難しいもののひとつです。
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◆“レッドゾーン”に足を踏み入れたら、後戻りはできない
慢性疾患に罹患した人は、じわじわと健康を蝕まれていき、気づいた時には、気力・体力の双方を失っています。
ただ、現代社会では、たとえ健康を失っても、人工呼吸器に繋いだり、生命維持管理装置を使用したり、先に述べたような胃瘻を増設したりすることで、延命させることが可能です。
人工的に人間の寿命が延びるに従って、不健康な状態で命が尽きるまでの数年を生きる人が多くなっていることから、「健康にも寿命がある=健康寿命」という考え方が生まれたのです。
下の図をご覧ください。
医学界新聞:2017年2月6日「『終末期』と見なす適切な時期とは?(関口健二)」をもとに作成
こちらは、死に至る4つのパターンを図にしたものです。赤い点線より上が、健康寿命だとお考えください。向かって右の3つのパターンが、慢性疾患の患者がたどる体調の変化です。
もし、健康寿命のレッドゾーン(赤い点線より下)を超えてしまったら、もう戻ってくることはできません。病院に行っても、薬を飲んでも、健康な体を取り戻すことはできないのです。
このことは、私が病院で勤務していた時に、痛いほど実感していました。
大事なのは、「いかにこのレッドゾーンを超えないよう、体の機能を維持できるか?」ということです。実際、ある程度の健康寿命を延ばすことであれば、すでに技術的には可能になっています。
健康寿命にアプローチする方法は、いくつかありますが、その中の一つがアンチエイジング(抗老化医療)なのです。
サーチュインクリニック院長 鈴木嘉洋
【参考文献】
厚生労働省HP、一般社団法人日本老年医学会HP、他
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