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2025年08月05日
「健康に良い」とされているポリフェノールの正体

◆「ポリフェノールとは、本当は毒物」
健康に関心のある方であれば、植物の有効成分の一つとして、“ポリフェノール”という言葉を聞いたことがあるのではないかと思います。
ポリフェノールとは、植物に含まれる苦味や渋み、色素などのもとになっている物質のことで、ブルーベリーやブドウ、りんご、赤ワインやコーヒー、紅茶、緑茶などに含まれています。
緑茶に入っているカテキンや、大豆に含まれるイソフラボン、ブルーベリーに含まれているアントシアニンなども、ポリフェノールの一種で、現在、8000種類ほどが確認されています。
ポリフェノールには、様々な健康効果が知られています。
最も知られているのが抗酸化作用で、体内の活性酸素を抑制する働きを持ちます。また抗炎症作用、免疫力向上も、ポリフェノールが持つ重要な効能です。
当然ながら、これらの効能は、人間のために作られたものではありません。もともと、植物は動物や昆虫から自分の身を守るために作り出しています。
つまり、ポリフェノールとは本来、人間にとっては毒物です。ポリフェノールに苦味や渋みがあるのは、そのためなのです。
《参考文献》
『植物はなぜ薬を作るのか』(斉藤和季著、2017年、文藝春秋)、日本調理科学会誌:Vol55,No.1,54~56(2022)、他
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◆人間は、どうやってポリフェノールを取り込んでいるのか?
実は、ポリフェノールは難消化性物質です。吸収率は、物によって約5%から30%程度と言われています。
吸収率が悪いにも関わらず、ポリフェノールは人間の体内で効果を発揮します。特に心疾患系の予防に効果があるとされています。
2022年、米ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院に所属する疫学者のチームが、カカオポリフェノールの一種であるフラバノールの研究結果を発表しました。
それによると、約2万1000人の成人を対象にした臨床試験で、1日500mgのカカオフラバノールをサプリメントで摂取した人は、プラセボサプリを摂取した人との比較で、心疾患による死亡リスクが27%も低かったということです。
基本的に消化・吸収されないポリフェノールが、人間の体内で効能を発揮する仕組みは、完全に解明されたわけではありませんが、最近、注目されているのが、ポリフェノールと腸内細菌との関係です。
ほとんどのポリフェノールは、小腸では消化されずに大腸まで運ばれます。ここで、腸内細菌叢による代謝を受けて分解・吸収された後に、各組織へ移動し、生理活性を発現していることが近年、明らかになっています。
また大腸には、ポリフェノールを分解する酵素を持った常在菌が存在していることもわかってきました。
ポリフェノールとは、植物が生き残り戦略に基づいて生み出している防御物質ですが、いわばその毒をも取り込んで、活用してしまう人間の生体システムもまた、巧妙にできているものだと感心している次第です。
サーチュインクリニック東京
院長 高田秀実
《参考文献》
日経新聞Web版:2024年3月6日、化学と生物:Vol.54,No.10(2016)、Vol.55,No.6(2017)、Vol.59,No.5 (2021)、Vol.60,No.3,No.4(2022)、他
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