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2025年07月15日

帝王切開と病気の意外な関係とは?

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【帝王切開と病気の意外な関係とは?】


 


◆帝王切開には、デメリットもある


前回、「子どもは生まれる前から、栄養状態や環境因子などから影響を受けており、それが将来的な病気の引き金となる可能性がある」点についてお話ししました。


同様に、子どもの分娩方法も、子どもが将来罹患する可能性のある病気と相関関係にあることが、最近、明らかになってきました。


下の図は、東大病院総合周産期母子医療センターのHPから抜粋した分娩数の推移ですが、2020年には出産数の35.1%が帝王切開での分娩となっています。



現在、日本では妊婦の希望だけで帝王切開をすることはできません。


帝王切開は、高齢出産、逆子、多胎、母体の病気や母子の命に関わると判断される場合などに行われます。


一方で、帝王切開で生まれてきた子どもは、それによって将来、病気になるリスクをも内包することとなりました。


2019年、スウェーデンの医師たちによって、帝王切開は自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)のリスク上昇に関連していたとの調査結果が、JAMA Network Open誌電子版に掲載されました。


また富山大学医学部などが行なった調査によると、帝王切開で生まれた子どもは将来、経膣分娩で生まれた子どもに比べて、3歳時点で小児肥満になりやすい傾向が認められたということです。


《参考文献》


日経メディカル:2019年9月26日、富山大学Press Release:2023年5月17日、他


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◆帝王切開のデメリットは、コントロールが可能


その他、帝王切開で生まれた子どもは、アレルギー、1型糖尿病、喘息などにかかるリスクが、通常分娩で生まれた子どもよりも高いという報告もあります。


なぜ、帝王切開で生まれた子どもは、こうした病気に罹患する確率が高くなるのか、詳しいことはわかっていません。


ただ、可能性の一つとして考えられるのが、産道を通らなかったことによる影響です。


通常、胎児が産道を通る際、胎児は母体から腸内細菌を獲得しますが、帝王切開で生まれた場合は、その機会を逸するため、正常な腸内細菌叢を獲得するのが、通常分娩で生まれた子どもに比べて遅くなると言われています。


ある研究によると、帝王切開で生まれた子どもの腸内細菌は多様性に欠け、生後6ヶ月を経過しても、通常分娩の子どもに比べて数値が低かったということです。


お伝えしたいのは、帝王切開で生まれた人には、こうしたリスクがあることを知った上で、ぜひ予防に努めていただきたい、ということです。


先述した通り、帝王切開で生まれてきた人は、医師の判断によるものであり、ある意味、生後の罹患リスクよりも、命が優先された結果です。帝王切開の技術が向上したことによって、比較的安全にお産ができるようになり、それによって助かる命が増加したのも、また事実なのです。


実際のところ、帝王切開で生まれた人全てが病気になっているわけではありませんから、少しでも発病する確率を低くできるよう、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。


 


サーチュインクリニック東京


院長 高田秀実


《参考文献》


日経メディカル:2019年9月26日、DOHaD研究第11巻第2号、昭和大学DOHaD班HP、他