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2024年07月17日

幹細胞という万能細胞を使えば、がんにならないで済むか?

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【幹細胞という万能細胞を使えば、がんにならないで済むか?】


◆身近にある幹細胞治療には、幹細胞は使われていない


最近、世間では“幹細胞治療”という言葉をしばしば耳にします。


幹細胞というのは、端的に表現するなら、体のどの組織にでもなれる細胞のこと。幹細胞治療とは、この幹細胞を培養して、悪くなった体内の細胞と入れ替えたり、組織を再生させたりすることを目指した治療法です。


治療に使う細胞は、自分の幹細胞を使うか、他者の幹細胞を移植するかの2通りあり、それ以外に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)などもあります。iPS細胞とは、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が、開発に成功した人工幹細胞のことです。

現状、幹細胞自体が非常に貴重でコストが高いため、一般医療ではまだ使われていません。今は、臨床試験の段階にあります。


通常、自費診療で使用されているのは、主に幹細胞培養上清液です。幹細胞を培養する際に使用した培養液の中には、幹細胞から放出された成長因子が多数含まれているとされ、それに滅菌処理等を施したものが上清液(上澄液)です。


“幹細胞と幹細胞上清液”というのは、ちょうど“米と米のとぎ汁“の関係に似ています。

しかし、まだ上清液内の成長因子を分離・抽出する方法が完全には確立されていないため、実際に治療を検討する際は注意が必要です(当院では現状、幹細胞治療は行なっておりません)。


 


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◆がんにも、がん幹細胞がある?!


実は最近、がんにもがん幹細胞が存在していることが明らかになってきました。


通常、体内のある組織の細胞が勝手に増えたり、他の組織の細胞に変化したりすることはできませんが、幹細胞には、「自己複製能力(幹細胞を新たに生み出す能力)」と「分化能力(皮膚細胞や筋肉細胞などに変化する能力)」という、2つの能力があります。


一方、がん組織の中に存在するがん幹細胞も、自己複製能力や分化能力を持っています。驚いたことに、がん幹細胞は、通常のがん細胞に分化した後、再びがん幹細胞に戻ることができるのだそうです。


がん幹細胞は、腫瘍を発生させる能力などを有し、抗がん剤に耐性を示します。近年、「がん幹細胞を叩けば、がん細胞の増殖を抑えられるのではないか」という研究が進んではいますが、残存したがん細胞から再びがん幹細胞が生まれてくるなど、変幻自在なため、一筋縄ではいきません。


だから何よりも、まずは「がんにならない=予防すること」が、もっとも重要な対策なのです。


幹細胞やiPS細胞を使った治療は、以前お話した「細胞で治療する」方法です。しかし私たち一般人は、そもそもその治療を受けなくても済むよう、まずは「細胞を治療する」ことから始めましょう。


サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋


【参考文献】

日本医科大学医学学会雑誌第17巻第4号、国立大学法人東京医科歯科大学HP、他